池悦子先生のココロに効くネット書道教室【最終回】

CULTURE

Posted on2022.04.04.

プレゼント

書道サロン主宰の池悦子先生による『ココロに効くネット書道教室』。毎回、筆を揮う映像とともに、皆さまへ今お伝えしたいメッセージをお届けしてきました。最終回となる今回、取り上げた文字は『優』。「やさしい」のほかに「すぐれている」という意味も持つ『優』ですが、池先生が込めた想いとは……。ぜひ楽しみながらご覧ください。

【読者プレゼント】
池悦子先生が書いた『優』の直筆色紙を1名様にプレゼントいたします。詳細は記事の最後をご覧ください。

池悦子

1970年から86年まで、宝飾品から家具・インテリア雑貨・紳士＆婦人ファッションまでの、海外のラグジュアリーブランドを集積した高級専門店の営業企画室に勤務。1986年に部下と共に、株式会社アイアンドエムを設立。ハイグレードなライフスタイルを提唱し、執筆・講演・イベント企画・マーケティングなどの業務を遂行。2012年、大東文化大学書道研究所書道教授者資格認定試験合格。漢字・仮名ともに『名誉成家』（最高位）取得。2014年から書道サロン『書便り俱楽部』主宰。本媒体のロゴも手がける。

今月の文字『優』

身近な人にこそやさしく接する

生活が大きく変わったこの2年は、心が落ち着かないことも増え、気持ちがギスギスしてしまい、つい、ご家族やお子様、ご友人や会社の同僚といった身近な方にあたってしまった……というご経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、こういう時こそ、身近な人にやさしく接するのが大切です。『優しさ』とは、憂いている人に寄り添い慰めること。相手をいたわり、感謝することを忘れないようにしたいものです。

真のやさしさは厳しさを伴う

一方で、会社でもご家族でもご友人関係でも、注意しない、怒らないように接する様子が多く見られますが、実はそれは本当のやさしさではないと、私は思います。真のやさしさとは、耳障りのいいことばかりをいうのではなく、指摘するべきことは指摘すること。もちろん、相手の心に刺さるような言葉遣いはいけませんが、きちんと理由を伝えたうえで注意する、指摘することを心がけること。相手に向き合いしっかり関わっていくこと。そうした厳しさを伴った行動こそが本当のやさしさなのだと思います。

やさしさが文字からも伝わるように

今回の『優』は、できるだけやさしく、力を入れずに書くことを意識しました。もし『優』の字を「すぐれている」という意味で捉えたとしたら、もっと勢いよく力強く書いたでしょう。実は前月の『花』と同じ筆を使っているのですが、ぜひ見比べてみてください。受ける印象がまったく違うと思います。この一文字にどんな想いを込め、何を表現するのか、それによって選択する筆法が変わります。やさしいという意味が文字そのものからも伝わるように、どこにも力みがない筆の運びを心がけました。

【ファッションコラム】装いもやさしさの表現のひとつ

4月は就職や進学といった“始まりの季節”ですね。人と人とが新しい関係を築いていく季節です。実はマナーとは、他人へのやさしさが基本にあります。マナーと聞くと身構えてしまう方や型ばかりを追う方も多いですが、それは違います。マナーはルールではなく、お互いに心地よく生きるための方法なのです。服ひとつとっても同じことがいえます。服は自己表現のひとつですが、相手に対しての礼儀を示すものでもあります。そう考えると、ご自身をどのように演出するか、どのような装いをすればいいのかが自ずとわかるのではないでしょうか。

今回は、『優』を表現するために、鮮烈な色は避け、明度の低い色を選びました。柔らかな印象で春らしさを感じさせます。